
げんちゃんは、最近、コーヒーを飲み始め、温度と蒸らしに気を配って、おいしいのを入れてくれます。これも成長。ピザトーストも言えば作る!
初任者研修で学んだ「技術」と「心」
げんちゃんは初任者研修の講習会に、毎日とても楽しそうに通っていました。
この研修の様子を見ていて、本当に素晴らしい講習だなと感じました。介護の仕事をしない人にとっても、ものすごく役に立つ内容ばかりだからです。
例えば、お年寄りが手をついたときにどうサポートすればいいか、車椅子に乗った方へどのような配慮をして介助するべきか。さらには、食事の介護やシーツの交換方法まで、あらゆる介護の技術を教えてくださいます。
また、単に「物理的にどう介助するか」という技術面だけではありません。身体機能が衰えていく高齢者の方々にどう寄り添い、そのお気持ちをどのように理解して差し上げるか。そういった心構えについても、具体的な事例を挙げながら細やかに学ぶようです。
「疲れ」を吹き飛ばすほど楽しかった実習と仲間たち
げんちゃんは朝の9時半から夕方5時過ぎまで、実習を交えた講義を「疲れた〜」と言いながらも楽しそうに受けていました。片手ほどの人数の受講者同士でペアを組み、近くの公園で車椅子を押しながらお互いに役割練習の散歩をしたり、洋服の着脱を学び合ったりしていたようです。
たまに実習がほとんどなく、朝から晩まで講義という日もありましたが、そんな日でもげんちゃんは、眠気を見せることもなく、しっかりノートを取っていたようです。(先生によると。しかも一番前で)
そして夕方帰宅すると、そのノートを自宅でもう一度まとめ直すのです。日曜日になっても介護のテキストを開いて勉強に励んで、14日間の研修が終わる頃には、終わるのが「寂しい」と感じているほどでした。
初めて芽生えたのかな?「会話の楽しさ」と成長
受講生の中には、外国の方もいらっしゃいましたが、日本語でお話ができたと言ってました。
高校時代のげんちゃんといえば、お友達とおしゃべりをしながら食べることもできず、
話しかけるように、と私が言うと、
「どこから来てるの?」と話しかけはするけれど、「〇〇から」と答えた友達に、「うん」で話が終わるお粗まつな状態でした。
こんなつたない会話しかできなかったため、当然友達もできません。高校では、そんな状態で卒業してしまったので、もしかすると誰かと「仲間」意識が持てるという感情の芽生えは、今回が初めてだったと思います。
もし同じ状況が、高校の時にあったとしても、げんちゃんは、きっと心を動かさなかったと思います。ステージが変わったのだと思います。
自立訓練の事業所でも、授業内で交流を促されることはあっても、個人的に歓談することはほとんどありません。会話を学ばせようと、色んな機会をとらえてやってみてましたが、げんちゃん自体が動きませんでした。
でも、今回の交流は心から楽しかったのだと思います。
コミュニケーションを楽しむスタートラインにやっと来たのか!
もっとも、コミュニケーションが苦手なげんちゃんが、介護の学校で、どれほど話せていたのか、私にはよくわかりません。ただ、担当の先生にお聞きすると「楽しそうに歓談していましたよ」とおっしゃっていました。
「へえ!」と思いましたが、高校の頃と比べてげんちゃんの会話力は着実に伸びているのでしょう。たけこ先生とZoomで少し上のお姉さんと話すような感覚でおしゃべりしていただいたことも役に立っていたでしょうし、何よりげんちゃん自身に「やりたい」という気持ちが入っていたことが今までとの大きな違いです。
高校時代とは、げんちゃんの内面のステージがまったく違っていたのだと感じます。
車内で飛び出した、まさかのジョーク
それを実感する出来事がありました。
ある日、私が車を運転している時に、助手席のげんちゃんに、
「おやつの袋をあけてくれない?」とお願いしたことがありました。
するとげんちゃんは、袋を開け、運転する私の口へ、ひょいと食べ物を運んでくれました。
その時、げんちゃんはにたっと笑い、介護の現場みたいに、
「はい、お口を開けてください。美味しいですよ〜」
と、いたずらっぽく言ったのです。
私は思わずびっくりしてしまいました。「こいつ、私にジョークをかましてきたぞ!」
知的障害のある子にとって、ジョークを言うというのはかなり難易度が高いことです。特に自閉傾向が強いお子さんにとっては、高いハードルになります。そのげんちゃんの口からちょっとしたジョークが飛び出したので、私は思わず感動してしまいました。
そういえば昔、小学校の支援学級の先生が
「げんちゃんはジョークがわかりますよね」とおっしゃっていたのを思い起こしました。
ジョークを理解できるのは非常に高度なことなのだそうです。当時のげんちゃんがスラスラと冗談を言えていたわけではありません、しかし、私が信頼していた、その支援の先生は、げんちゃんの中にそういう種を見出したのだと思います。
思い返せば、気持ちが入っているときは、お姉ちゃんにダイレクトないたずらではなく、ちょっとしたジョークを挟んだイタズラを仕掛けることがありました。非常にレアなできごとではありましたが・・・
もしかしたらげんちゃんには、潜在的にコミュニケーション能力を伸ばせるベースがあるのかもな~。と思ったことがありました。
それがここへ来て、ようやく少しずつ表に出てきたのかもしれません。
努力が実を結んだ試験当日と「93点」
さて、研修の最終日は修了試験です。
たまたま試験の前に先生とお話しする機会があったので、「もし試験に落ちたらどうなるんですか?」とお尋ねしてみました。すると先生はニコリと笑って、
「大丈夫ですよ、落ちませんから」
とおっしゃいました。全員合格を前提とした仕組みなのかもしれません。
とはいえ、あまりにメタメタな結果であれば、現場でお仕事をすることはできないでしょう。
試験当日、帰ってきたげんちゃんは「93点だったよ!」と言いました。そして、講習校が発行した初任者研修の資格証を誇らしげに持ち帰ってきたのです。げんちゃんは本当に嬉しそうでした。
毎日毎日ノートをまとめて、それをGoogleのAIにかけてポッドキャストを作成し、音声で聞き流して復習する……という勉強法を自ら実践していたのですから、その高得点はまさに努力の結晶でした。それに何より、問題文の意味をしっかり理解できているという点においても、げんちゃんの力が大きく伸びたことを確認できました。
次のステージへ!単発バイトで介護の現場に挑む
その後、就職を斡旋してくれる先生とのミーティングがありました。
げんちゃんは来年から調理師専門学校へ通うことが決まっているため、「長期のアルバイトは難しいのです」とお伝えしたところ、「それでしたら、うちではちょっとご紹介できませんね。うちは人材派遣の仕事がメインですので」と言われてしまいました。
そこで、げんちゃんと一緒に単発バイトアプリ(タイミー)で改めて探し、介護の単発アルバイトを一度体験させて戴くことにしました。
果たしてしっかりと勤まるでしょうか。
これまで経験してきた物流倉庫での荷物のピッキングや仕分けといったお仕事から、いよいよ次のステージへ進みます。今度の相手は「人間」です。荷物のように扱うわけにはいきません。どうなることかと、親としてはハラハラドキドキです。
とはいえ、スキマバイトアプリを使って比較的易しいアルバイトにいくつも挑戦してきた実績があります。いきなり何もしない状態から飛び込むわけではないので、私の気持ちも少しだけ安心しています。
”21歳。介護の資格を取り、初めて介護の世界に飛び込んだ男の子。”
まだまだ世間様からは、多少の下駄を履かせて(多めにみてもらえる)戴ける枠にぎりぎりいるかな、と思います。少しずつ、階段を上っていってほしいです。
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