
夏を描いてみたくなりました。
1. 高校卒業後ホームプラン、3年目の目覚めか
げんちゃんは、1か月の介護の初任者研修にハマりました。高校を卒業して、モラトリアムの3年目。独自のスケジュールでやってきましたが、鳴かず飛ばず。高校卒業後、例えば、次の専門学校に行くとか、何らかの場所で社会に出るとか、それなりのコースを選べるようになるための準備の段階。それは1年で済むと思っていましたが、とうとう3年目に突入したのです。
その間、げんちゃんのやる気のなさといったらひどかった!!!
じゃあ、高校卒業後、ドーンと社会に出せるか、(専門学校も含めて)、というと、基礎的な能力は全くそれに追いつかず、結局宙ぶらりん。
高校卒業後は、独自メニューの、モラトリアムの期間となってしまったのです……
2年と3か月が経ち、行き詰まるだけ行き詰まった私は、それなりにげんちゃんの、能力の伸びは感じて、次なる手を打ったのです。
スキマバイトのアプリで、なんとかできそうなアルバイトを探して、行かせてみたのですが、
なんと! 少しここで目覚めました。
少しイキイキし始めて、気持ちを入れた状態が現れるようになりました。
私たちが必死でやってきた基礎能力の成長。その資産を、やっと使うべくげんちゃんが動き出した、と感じました。
2. 挫折と執念のフォークリフト講習
様々な場所でのアルバイトの体験。またアルバイトの種類をアプリで見るのも、げんちゃんと私自身の視野が広がりました。
それを皮切りにフォークリフトの講習へつながりました。
S先生のアドバイスもあって・・・
フォークリフトの5日間の研修はかなりハードなものでしたが、げんちゃんは愚痴一つ言わずに講習について行っていました。
抜けているか、舐めているか、トンチンカンしているか……そんな感じのげんちゃんが、普通にパニクっていたようです。パニクっているからこそ一生懸命やったのでしょうか。
そして、げんちゃんは試験に2回落ちました。
そして先日、介護の研修を受けながら、げんちゃんはフォークリフトの3回目の再試験も受けました。
もともとの受講者は7名です。そのうち二回目の追試に突入したのは2人。
こういう時、私ならば、もう一人の受講生と軽口を叩いていたかもしれません。場合によっては親しくなって、会話します。だって、落ちたの二人だし。
でも、げんちゃんも相手も、そういうことはなく、終わったようです。お互いにテンパっていたのかもしれませんが、相手とまったく話もしていないのは、余計なことを考えない、ノイズ拾わない、げんちゃんらしいな、と思いました。意識の広がりはまだない、と言ってもいいかもしれません。
3.人生初の資格取得
私はたまたま再試験の日が休みだったので見に行きましたが、
「お母さん来ないで。緊張するから、僕を送ってくれたら帰って」
と言われていました。それでしばらく講習を見た後、私は近くのショッピングモールで時間を潰しました。1時間ほど経って、げんちゃんから電話。
「お母さん受かったよ」
「へー、そう。でも、それは、教官のお情けね!」
と思わずつぶやいてしまいました。
それは、お情けと言いたくなるのも当然で、げんちゃんを見学した時、げんちゃんは、かなり教官から指導されていました。もう1人の受講生は、げんちゃんの5分の1くらいしか言われていないのに、げんちゃんは、逐一、色んなところを指導されていたのです。
それでも受かったのですから、相当温情があったと私は思っています。
しかし、致命的な安全確認だとか、大きな間違いはやらかさなかったのかもしれません。
げんちゃんは合格を告げられたときに、教官から、
「仕事をするときは、少し練習させてもらってからにした方がいいよ」
と言われていました。やはり、げんちゃんのぎこちなさは、どこでも露呈します。
体の使い方、意識の使い方、まだまだなのです。それがフォークリフトにも出ているのだと思いました。
でも、人生初の資格証明書。国家資格ではないのでしょうが、輝かしい”資格”というものです。
IQ60だった子と考えれば、たいしたものでしょう。(卒業後も、ボケっと受けて、似たようなIQを出していました。)
簡単とはいえ、座学もこなし、筆記も通ったわけですから、言葉の理解も最低限出来てるということだと思います。
暑い炎天下の中、朝の8時から夜の6時まで3日間びっちり研修し、追試では1時間ほどまたさらに研修して試験を受ける。それを2回。
まあ、げんちゃん、頑張ったと言っていいでしょう。
4. 「テスト」に向き合えなかった過去からの成長
そういえば、ふと思い出します。
げんちゃんという子は、小学校高学年の頃、何とか一般クラスに入れてもらって、テストなどを受けさせてもらっていましたが、そもそも「テスト」ということ自体分かっているのか……。そういう意識状態でした。
テストといえば、パブロフの犬のように「そこだけは真剣にやる」、というモードに誰もが入ると思いきや、成績以前に、テストというものに対して、何の気持ちの変化もおこらない、というステージにいたのです。
目の前にある何かを、なんとなくやっている……そういう状態のげんちゃんだったのです。
中学校あたりから、テストというと、やっと、いわゆる「テストの気持ち」になって、取り組むことが、多少できるようになりました。
時間を考えたり、解く順番を考えたり、そういうレベルの高いところまでは行けません。ただ「テストとなると、普段よりも真剣に意識を使う」ということがやっとできはじめただけです。
それからすれば、げんちゃんがフォークリフトの試験に対して、全力でトライしたということは、彼のトラブルの本質、意識レベルの改善がおこっていることが理解できました。
5. ハローワークでとっさに、普通枠を選ぶ
フォークリフト資格が取れたその足です、私はすぐ、げんちゃんをハローワークへ連れて行きました。仕事を探すということを体験させたかったのです。
もちろん、フォークリフトを教えながら仕事をさせてくれる、うまいアルバイトはないか、探そうと思いました。
ハローワークに行くと、入り口で
「このような手帳などはお持ちではありませんか?」と聞かれました。
「このような」と指した先には、障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳……そういう、いわゆる障害の手帳の名前がずらっと並べてありました。私はドキッとしながらも、
「いいえ」と答えました。げんちゃんの成長のためには、げんちゃんを障害者枠で行動させることは、プラスにならない、と思ったからです。その枠では、げんちゃんは伸びないと思っていたからです。実際は、療育手帳持ちです。
とにかく、ここまできたら、あくまで、普通の基準をげんちゃんに、叩き込まなきゃ・・・
ま、「フォークリフト」と検索したけれど、アルバイトはありません。係の人に聞くと、「フォークリフトというのは正社員でガチに入って、そこで少しずつ教えてもらいながらやっていくものらしいです。
そうか……スキマバイトでも「フォークリフトは経験者のみ」と書いてありますから、げんちゃんのこの資格はt、永遠に使うことなく、しまい込まれるものかもしれません。でも、目的は、挑戦と、運転に伴う責任や、もろもろの学びをしてほしかったので、目的は果たしました。
げんちゃんにしては快挙です。
6. 初任者研修への没頭と21年目のプチブレイクスルー
さて、初任者研修が毎日、週4日ほどびっちり夕方まであります。
げんちゃんは帰ってきて、私に習ったことを滔々と話してくれます。
あんなにロジカルな会話が難しく、何を言っているのかよく分からないげんちゃんが、理路整然と介護の習ってきたことを話すのです。私の知らないこともいっぱいだし、
「こんな言葉をげんちゃんが使うの?」と思うような抽象的な言葉も習ってきます。また、シーツの交換や洋服の着せ替えなど、さまざまなことを実習します。でもげんちゃんは楽しくて仕方がないらしく、ノートをしっかりとってきています。ノートのレベルは、せいぜい小学校中高学年レベル。
でも、内容は、そこそこ網羅して書いてきているようです。
ただ、ノートのレイアウトなどがまだまだなので、げんちゃんに
「家に帰ってきたら、その日習ったところをもう一回自分なりにノートねんにまとめて清書しなさい」
と指示しました。げんちゃんは嫌がることもなく、毎日帰ってきてノートの清書をしています。
その内容を今度はグーグルのAIに入れて、ラジオ解説風に作り直してもらいます。げんちゃんの作ったノートでできたAIのラジオ番組風解説は、なかなか充実していて、私もとっても勉強になりました。げんちゃんはそれを、車に乗ったときなどに聴きながら、道を走ります。本当に見たこともないくらい、げんちゃんは没頭しています!
多分、苦節21年、初めての、プチブレイクスルーだと思っています。
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