立花高校は、ゆうすけ君のママが、見学の申し込みをしてくれました。
小中とおして支援クラスのママ友で、交流があるのは、数人です。
私の車で、立花高校へ向かう中、げんちゃんとゆうすけ君は、たわいないおしゃべりをしていました。きれのある話ではないけれど、楽しそうに話がはずんでいます。
高校につくと、こぎれいな部屋に通されて、担当の先生が
「トイレ、大丈夫ですか?」
と二人に聞きました。なるほど、事情のあるお子さんが来る学校だけに、配慮が半端ない・・
「大丈夫です。」
と、無表情で答える二人。思わず私の指導が入ります。
「そういうときは、”大丈夫です。ありがとうございます。”と言うのが礼儀ですよ。あなたたちのことを心配して、先生が聞いてくださっているんだからね!」
ところが、そのあとすぐに、へんてこりんな事態がおこりました。
「あの、トイレ貸してください!」
げんちゃん、なんじゃそれ~!しかも、すぐさま、ゆうすけくんも、
「トイレに行きたいです。」
ほんとのっけからやってくれるこいつら~。
やっと戻ってきたと思うと、今度は、げんちゃんが、ズボンのボタンを応接室ではめようとしています。
「何をやっているの! そういうことは、ちゃんとトイレでしてくるものでしょ!」
別にパンツがあらわというわけではないけれど、応接室でやることではないわな~・・・。指摘すると?「え?いけなかった?」とすっとぼけている。
それから、先生に質問されていました。学校の授業は何分? 2学期制?3学期制? ・・・時間のことを聞かれて、二人とも撃沈です。何時に始まって何時に終わる? だったら何分?みたいなことでした。別段難しいことでもなかったのですが、二人ともあきれる解答をしていました。
でも、先生は、にこにこしながら話を続けています。
ほんと、出すとこ出すと、こいつら、ぜんぜん社会では通用しないってことがよ~くわかりますわな! 笑
良い経験だ!
次に、施設見学になりました。二人とも、とくに悪目立ちすることもなく、静かに回りました。なるほど、しゃべらなかったら、まあ、普通に見えるか~・・・・笑
帰りの車で、私は二人に質問します。
「ねえ、今11時25分だけど、立花からここまで何分かかったんだっけ?」
するとゆうすけ君がさっと答えます。
「出発した時間がわからないから、よくわかりません。」
ほう、ちゃんと突っ込んできた。すごいな~。
ゆうすけ君は、げんちゃんより、もとは頭もいいし、意識も出ている!
私は、出発した時間を言いました。すると、二人は、しばらく考えて正解を言いました。
「しっかり考えればできるじゃないの! じゃあなんで、できなかったの?」
私は冷たく言います。するとまたゆうすけ君が、
「突然聞かれたのでわかりませんでした~。」
とまた、きびきびと答えました。言い訳もちゃんと言えるんだな~。私は揚げ足をとるように、
「ゆうすけ君。普通の子はね、突然聞かれたって、あの程度の質問にはちゃんと答えられますよ。」
ゆうすけくんは、ちょっと調子悪そうに、神妙な顔をして、ハイ!、と元気に答えました。
「ゆうすけ君は、ちゃんと能力あるんだから、もっとがんばんなくっちゃね。時間くらいさっさと答えられるようにならないとね。あなたは、もっと勉強もできるはずだよ。」
ゆうすけ君は、知的クラスで、小学校4年くらいの教材をしているそうです。
わたしは、おもむろに、ゆうすけ君に直球を投げてみます。
「ゆうすけ君はさあ、将来作業所とかで働きたいの? 作業所って、お給料安いわよ。」
するとゆうすけ君は、
「いえ、いやです!」
と、明るい声で、きっぱり即答しました。あれまあ・・・・努力はいやそうだけど、そういうことはしっかり主張するんだね~。
「そう、じゃあ、もっとがんばりなさい。あなたは、ほんとは頭がいいわよ。おばちゃんが認める!」
繊細だと言うゆうすけ君ですが、私との掛け合いが、まんざらでもないようです。私に突っ込まれるのがどこか楽しそう・・・
げんちゃんを学校に送ろうとしていたら、ママが言いました。
「ゆうすけは、学校に戻らないから、」
「え?家でホームスクール?」
「いや、そうではないけど・・・。学校にもどりたくないって言うから・・・」
あれまあ、ゆうすけ君のペースなんだね。
・・・私は、また、ゆうすけ君に、
「ゆうすけ君。学校に行きなさい。家でなにすんの? しっかり勉強がんばらないと、さっきの高校だって行けないわよ。努力しないと、どっこも行けませんよ。」
ゆうすけ君は、どうも圧からすり抜ける術だけは、上手につかんでいるようです。またまた、即座に返してきました。
「でも、ぼく、学校の用意していないから。」
やれやれ、しっかり自分都合を通すことだけ覚えてしまっている。
「家まで連れて帰ってあげるから、用意したらいいじゃない。送るわよ。」
「いや、いい~。」
こうやって彼に接してみると、ゆうすけ君は、繊細とか言うけど、なかなかしたたかでした。しかも、私に反撃するのが、なんか楽しそう。”あんたは、僕のお城まで登ってこれるかい?”みたいな、いたずらっこの顔をしています。私は、ゆうすけ君の中にあるたくましさとずるさを見たような気がしました。
すると、ママが感心したような顔で言いました。
「なんか、げんママの声掛け、勉強になるわ~。私も、もっと考えないといけないわ。・・・どうしても、この子は障害児なんだから、って思いが私の中にあって、やろうとしなくても、まあしかたないか、ってあきらめているところがあるんだよね。でも、上の姉には、もっとしっかりやるように、あれこれ強いこと言うわけだもん。障害児だから、やらなくてあたりまえ、はおかしいよね。まず、ゆうすけを伸ばすには、自分のその感覚をあらためないといけないかも・・・」
それを聞いてなるほど~と思いました。
たしかに、私には、障害児だからできなくてあたりまえ、という感覚はない。あなたのチャレンジだから、しっかりやりなさい、としか思っていない。
ゆうすけ君とげんちゃんの違いは、ただ、やるかやらないか、の違いだけだ。
その日こんなこともありました。
ゆうすけ君の靴紐がとけて、それをげんちゃんが結んでやったのです。象徴的な出来事だと思いました。げんちゃんだって、リボン結びなんて、一生できるようになる気がしませんでしたが、昨年なんとかトライして、いまは、普通に結ぶようになりました。まさにやるかやらないか・・・それだけなのです。
ゆうすけ君は、繊細だけど、やらなくていい言い訳を考え、逃げこめる場所を確保するしたたかさは備えていました。それは、ずるさ。ずるさは許してはいけない、と思う私です。もっと現実を見つめさせて、自分の人生を真剣に考えていくチャンスを与えてあげるべきだと思いました。
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ゆうすけ君の会話力が高くて驚きますね。知的のクラスにいらっしゃるお子さんと言っても皆さん実は高い能力を秘めていることもあると思います。
roboも主治医には初め軽度知的障害か境界知能の下の方の子だと思ったと言われましたが、本来の力がどれくらいのものかは分かりませんね。
能力に偏りがあって出来ないことが多いために、発達障害という診断が下るのですから、出来ないことがあるのは当たり前だと思います。でも、働きかけによっては伸びるということも1つの事実だと思います。伸び幅はその子によって違いますし、親の理想が先行して過度な負担を掛けると、かえって伸びるものも伸びなくなりますので、やみくもに働きかければいいと言うわけではありませんが、伸びると信じて関わることは大切だと私は思っています。
ゆうすけ君は伸び代がたっぷりですので、今からでもママさんに頑張っていただきたいですね。もちろん、大人になってからも成長は期待出来ますが、今時期に比べると伸び率は低くなりますので、大きな伸びが期待できるあと数年の間こそトライしていただきたいですね。
学校に行くか行かないかについて、基本的にはしっかり取り組みたいと思っている子が自分の体調や精神面のことを考えて判断するなら、いいのですが、ゆうすけ君の場合はまだそこまでモチベーションが高くはなさそうなので、親御さんが行くように促して上げた方が良さそうですね。
とても伸び代のありそうなお子さんなので、少し関わり方を変えただけで劇的に伸びる可能性のあると私も思います。
ロボママさん
ロボママさんも、たぶん、ゆうすけ君に対して、同じような見解を持たれたんじゃないかな、と思います。
親の理想を押し付ける、というのではなく、その子の立ち位置に立って、努力させる、ということが大事だと思います。
一生学びといっても、おっしゃるように、今の伸びしろは大きいですから、タイミングを逸しないでほしいな~と思います。
それと、彼は能力があるのに、それを逃げることにことごとく使っているのが見えたので、親として、それはしっかり教育すべきだと思いました。
将来、逃げていることのつけは、自分自身に帰ってくると思います。
外側を見るだけでは、教育ってうまくいかないと思うのです。この子の心の状態がいつも、上に向いていたらいいですが、逃げようとか、都合のいいところだけ乗っかろう、とかいうマイナスに傾いていたら、親は、しっかり指導するべきだと思います。
でもゆうすけ君のママのような方は多いように思います。どこかにあきらめがあるように思います。
あるいは、障害児という枠の中で、子供をとらえている。
人である以上、障害児とかいう枠の中でとらえるのではなく、みなにあてはまる良いこと悪いこと、しっかり教えたいですね~。
高校見学は子ども同伴だったのですね。
トイレ事件、とんちゃんもやりそうですよ。
目に浮かびます。
障害児だからやれなくても仕方ないという概念は、私にもないです。
というより、とんちゃん3歳の時にげんままさんのblogと出会い、それからずっとげんままさんがスタンダードでやってきました。
ままさんの影響を大きく受けているという事ですね。
初期の頃に良いblogと出会えてよかったです。
ゆうすけくんは頭の回転いいですね。
もっといい方向にこの能力を使えると違ってきますね。
とんちゃんはこういう素早さはないですね。
本当に最近、ちょっと見られるって感じ。
私事ですが、火曜日の祝日にアスレチックに行きました。
勿論とんちゃんを鍛えるためです。
私も一緒にやりました。
調子に乗って張り切ったら、アキレス腱断裂しました。
もう若くはないですね。
松葉杖生活が始まりました。
そう、とんちゃんの面倒を見てやれなくなったのです。
学童の迎えもできず、1人で帰ってきてもらったり、身の回りの事何でも1人でやらねばなりません。
とんちゃんは一応、ママが手伝えない事がわかり、遠慮がちな態度を取ります。
これは自立に向けて、いい機会なんだなと思いました。
人を頼ってばかりのとんちゃん、物理的に頼めないので、最初からママにやってもらおうとする選択肢が減りました。
怪我が治る頃には、何でもできるようになって欲しいですね。
私もゆうすけくんママタイプです💦
そもそも息子を支援級に入れようと思ってたのですが、娘から普通級に入れてほしいと懇願され、その後は必死で就学相談の担当の方にお願いし、普通級の許可をもらいました。
息子が1年生でサッカーにはまり、サッカーでいろんな経験をさせることになり、もうすぐ中学で、部活でいいのに、クラブチームを本人が選びました。
私、めちゃくちゃ心配性で、無理はさせたくもないので、もし支援級に入れてたら、ゆうすけくんのような感じになっていたと思います。
発達障害であっても伸びていくんですね。
知ってる子が1人もいないなか、サッカーで9日間もヨーロッパに行かせたなんて、いまだに信じられません。
そんなこと出来ないだろうと諦めたり止めさせたりしては駄目ですね。
私&息子には普通級があっていたと思います。
ここあさん
エラーかなと思って消しました~。またコメントくださいね~。
とんままさん
アキレス腱、だ、だ、大丈夫ですか~?痛かったでしょう・・・ほんと名誉の負傷ですね~。
とんちゃんに、まだまだ、たくさんやらせたい、と思っても、ほんと体がついていかない・・・というのよくわかります。私も、エネルギーがないと、ヤツにはのぞめません。ほんとに。
でも、私のブログがスタンダードなんて思って下さるなんて、それはそれは、大変です~。笑
ありがとうございます。
なんせ、限界突破をしようと思っているのですから、普通のがんばりではいきませんからね・・・とんままさんも仲間になってくださって、ほんとありがとうございます。
しかし、不幸中の幸い・・・子供には、足りないことが大事なのかもですね。
昔の子って、足りないことばかり、とくに、私の親世代なんて、お菓子さえ、ろくにないような時代です。だから、だめになっているか、っていうと、反対で、母は、タフでいろいろできる。
今回も、ちょっと大変な事情が、逆に良い方になりそうですね。
でも、お大事に~。しばらくはほんと大変ですね。
治ったときに、とんちゃんが、新しいとんちゃんになっていたらいいですね。
みかんママさん
そうですか~。ゆうすけ君のお母さんタイプなんですか~。
そうすると、お子さんに圧をかけるのが苦手なのでしょうか。でも、うまく、環境がいろんなことを補ってくれてよかったですね~。
自分の思ったことを通していくお子さんだから、ママだけの世界だったら、ちょっとおされてしまうでしょうが、サッカーを軸に、普通クラスもよかったし、いろんなことがうまく回りましたね。
でも、それも、やはり、ママのお子さんに改善してほしいという思いがあって、できることは積極的にやってこられたからだと思います。
中学になると、小学校でまいてきた種の刈り取りをしないといけません。また、違う局面があります。お子さんがどう成長するか楽しみです。
すいません。何度もコメントを書いているのですが、画面認証でエラーになるのでテストしてました。文字数が多いのかもですので減らしてみます。
ゆうすけ君勿体無いですね。支援級の子供たちを見ているとしたく無いことはしない。時間を守れない。ゲームに依存する。そんな子供たちが多いです。親御さんも『どうしたらいいかわかりません。』『本人が嫌がることを無理にさせないでください。』と言われます。ある子供は嫌いな授業の時に『頭が痛い。』と言い出したり、急に咳をしだして保健室に行きます。学校にこない時もあります。プリントをしていて間違いを指摘すると『そうしようと思っていた。』『だってやり方を知らないもん。』と言い訳をします。自分の自尊心を守る為の事かもしれないのですが、今のままでは守られた世界でしか生きていけないですよね。こんな子供たちを諭す支援学級の先生は稀です。大抵は『学校が楽しくなるように。』と一見子供のことを思っている風で、実は平穏無事に1日が終わることしか考えていない方の方が多いです。
娘は個別の塾に行かせていますが、『伸ばそう。』とか『受験をさせよう。』とか思ってくれる先生はいません。今の塾も『毎回楽しそうにお勉強してますよ。』と言われます。中学校の支援級の担任は卒業後の行き先を決めないといけない責任が出てきますが、医者も療育者も言うだけ言って何の責任もとりません。娘は小学校入学の前に言語療法士に『支援学校に行ったらリーダーになれますよ。』と言われました。こちらの気持ちなど分かろうともしませんでした。娘と同級生の子供さんの親御さんは、中学校は支援学校にするつもりで見学に行かれました。でも『一番差別している。』と感じて、地域の中学校の支援学級に入れました。でもこちらは他が足りないのでそれはそれで大変そうです。もっと支援学級が個別に対応できればいいのですが、今の教員不足の中支援学級に人手が回ってくることはないですよね。娘の良いところを伸ばせて、学習を積み重ねていけるところがあればいいのですが。。。もちろん家庭でのフォローはまだまだ続きますね。
ここあさん
支援員のお仕事をされていらっしゃるから、私より、いろんなことを実感されているんですね。
確かに、知的障害を持った子で、逃げを感じない子って、少ないです。
向上心がある子でも、自信がないので、そのまま逃げている子も知っています。親は、その子のうしろからぐっと押してあげないといけないのに、無理しなくていいよ、とか無理だね、あなたには、と引き留めてしまっています。
考えることから逃げ続けるげんちゃんから見たら、うらやましいような、気持ちのベクトルがあるのに、それを止めてどうするの?って思います。もったいない。
結果的に、げんちゃんより、伸ばすのはたやすいと思われても、外に現れているできること、というのは、げんちゃんより、ぜんぜん下だったりします。もし、げんちゃんにやったことをこの子にしたら、とっくに、私が思うところに、この子はいっているに違いない・・・そう思うことが多いです。
ゲーム漬けというのもよく見ます。ぜったいやってはいけない禁忌だと思うのに・・・
やはり、親の考え方が、一本通ったところがないんではないか、と思います。
そして、書いていらっしゃるように、指導者も、障害児という枠の中でしかとらえない人が多いです。障害児も普通の人もない、ただ、正しい生き方があるだけだと思いますが、そこの軸がぶれぶれです。
結果、自分でやるしかない、ということになってしまいます。
お嬢さんの伸びる力を、そのまま生かして、次々に一つ上のステップのあげていける環境は、やはり、自分でアレンジしてやるしかないのかもしれませんね。
げんちゃんも、門が開いたところに、流れができたとこに、行かせるつもりです。
そこの環境の悪いところは、今までのように、アレンジしていくしかありません。
ほんとにどうなるのでしょうね~。げんちゃん次第です。
考えること、感じること、つなげること、それから逃げ続ける限り、良い門は開きません。げんちゃんが、真摯にかわっていってほしいですよ~
ここあさん
どうもエキサイトは字数制限があるようです。すみません。何度も大変でしたね~。申し訳ありません。