げんちゃんのシャドーボックス(3Dアート)作りは、4作目になりました。ハサミもにぎれないガキだったげんちゃんの指先能力は、別人です。
算数の文章題に潜む「言語の壁」
算数が苦手な、げんちゃんのような発達障害児でも、実は根本的な課題が「言語理解」にあったりします。計算はできても、文章題はだめ、という子が多いのもう なづけます。
げんちゃんに算数をさせてみても、結局のところ問題の核心は「言語」にあると感じることが多いです。
特に文章問題になると、頭の中に言語として、質問をしっかり落とし込むことができず、フィーリングで数字を足したり引いたりしているように見えます。気持ちを使わないので、問題を言語化しない、そのため、質問の状況を映像化できないのです。
とんちんかんな言葉と算数言葉の難しさ
言葉の使い方がずれると、問題が把握できませんし、そもそも、概念さえ入りません。
特に「算数言葉」は、数から逃げているげんちゃんにとって、存在さえない時代が長かったです。
少しはできるようになった今でも、丁寧に勉強を見たりすると、あぜんとします。
げんちゃんは、私に言語化を求められると、とんちんかんな言葉を使いまくります。
例えば、「妹の体重は僕より9キロ少ない」「お父さんの体重は僕の2倍で64キロ、では妹の体重はいくら?」なんていう問題。
気持ちが全く入らない時などは、64キロを9キロで割ってみたりするからおぞましい!
問題を言語化して体に入れようなんて気が毛頭ない。やっと、圧かけまくって、自分で言語化するように努力し始めても、
「お父さんの体重は僕より2倍」などと言ってしまいます。
算数で使う「1つあたり」「それぞれに」などの言葉になると、途端に適当で、言語の一つ一つの意味を、適当にやりすごすのです。そういう、本人のいいかげんな言葉の取り扱いは、学んだことを生活で応用する際に、きわめて障害になっていると思います。
(そもそも、内部言語を持とうとせず、詳細を言語に落とすことにきわめて怠惰、人としての基礎が崩壊しているんじゃないか、と言いたくなります!!)
挨拶や日常会話のテンプレート不足
また算数に限らず、会話の基本ともいえる挨拶も、実は多くの人が「テンプレート化」して頭に入れています。 しかし、それが欠けていると、とっさの場面で言葉が出てこなくなります。
げんちゃんもその一人です。
誰かが道を譲ってくれたときの「すみません」や「失礼しました」、ぶつかりそうになったときの「申し訳ありません」など、とっさの言葉が出てきません。
ルーティン化されたいつものことでも、日によって、出てこないことさえあります。
普通の人は、「初めての場面での挨拶」や「宅配便の受け取り」「留守中に来客があったとき」など、よくある状況での言葉を、自然とテンプレートとして持っていますが、げんちゃんはそれがほとんどありません。何度も経験しているのに、そもそも、挨拶したいという気持ちもないので、必要性も感じないのでしょう。
もともと感謝や申し訳なさといった気持ちがほとんどないから、言語がつむがれない、気持ちを表現したい、という心も生まれないのだと思います。
心にないことは、言葉にしにくい。
気持ちが伴わない言葉は、丸暗記に近い覚え方になってしまい、当然習得に時間がかかります。
だとしても、それでも繰り返すことで、少しずつ身についていきますから、訓練はし続けなくてはなりません。先ずは、型から、というのも、この際しかたのないことです。
逆に、言語がつむがれていくと、心にもその概念が入っていく確率が上がります。まさに、人の心は、言語あっての物種ではないかと思います。
まあしかし、こんなやつに、根気よく言葉の訓練をするのは、もう、自分の消耗でしかありませんね。AI登場です!
AIを活用した会話練習
もううんざりの極致である私の、言葉におけるAIの活用法ですが、これは、素晴らしいの一言です。
私は、チャットGPTの会話モードを使っています。
ある日の会話
げんママ「今から会話がうまくできない息子に会話の練習をしてもらいたいです。」
AI「ハイ、なんでも、どんな会話をしましょうか?」
げんママ「今から、お料理教室に体験に行きますから、初めて行って、そこでのあいさつの練習をさせてください。」
AI「はい、かしこまりました。お料理教室に初めて行くんですね。それはすばらしいですね。では、その時の会話を始めましょう。」
げんちゃん「こん・・にちわ・・・(けっこうどもる)。あの、今日参加するんですが・・・あの、はじめまして・・・げんです。よろしくお願いします。」
AI「はいこんにちわ。今日は体験教室に参加してくださってありがとうございます。お料理は初めてですか?」
げんちゃん「あ、いえ・・・あ、はい・・あの、朝ご飯を作ります。・・・」
AI「それはすごいですね。毎日ですか?」
げんちゃん「はい」
まあ、こんな感じで会話が続きます。横で聞いている私は、時々、チャットGPTに、アドバイスしたり、修正したり、げんちゃんには、もっと話を広げなさい、なんて、激を飛ばしています。
チャットGPTの会話は、声も選べますし、しっかり生身の人間のように、抑揚もすごいです。ほとんど普通の人としゃべってるかのような有様です。
彼は、かなり根気強く、何度でも同じ練習に付き合ってくれる“会話パートナー”になれます。
紳士的で優しいので、げんちゃんも、なんだかまんざらじゃないようです。機械相手とは思えないので、げんちゃんも、かなり必死でやります。
ただ、やはり、こっちが希望するようなリードはなかなかしてくれないので、やはり、三つどもえで、私が横やりをいれて、調整する必要があります。
しかし、そうとは言え、言語が苦手な、自閉症スペクトラムの子にとって、かつてなかった方法だと思います。
「初めての場所に行く場面」「買い物する場面。」
複雑な場面に向かわせるときなどは、その場面構成を、AIにしっかり伝えれば、かなり使えます。
げんちゃんが口火を切れなくても、AIが最初の口火を切って、気の利いた言葉をかけてくれたりします。
「こんにちわ、げんです。今日は初めて参加させていただきます。僕は不器用だから、色々ご迷惑かけることもあるかもしれませんが、がんばりますから、どうぞよろしくお願いします。」
こういうテンプレート的な言い回しの反復を、何十回も付き合ってくれたりもします。
また、何かを体験した後では、その出来事を忘れないよう、AIにあらゆる角度から質問させることも可能です。私対げんちゃんだと、こちらの疲弊がすごいので、AIを私が指導して、彼に間接的に相手になってもらうのは、げんちゃんにとっても私にとっても、ハッピーです。
まあ、AIは私のようにイライラして声を荒らげることもないので、げんちゃんも安心して話せるようです。
適切な会話相手を見つける難しさ
会話力の成長には、適度にレベルの高い相手が必要です。 しかし、それを日常で確保するのは簡単ではありません。
げんちゃんのように会話が苦手で友達も少ない場合、会話相手は限られます。
普通の同級生は、げんちゃんと会話するのは、物足りず、逃げちゃうでしょうし、小学生では引き上げてくれる会話は期待できません。
今その相手をたけこ先生が週2回ズームでやってくれていますが、やはり、それだけでは足りません。AIは、日々げんちゃんと私に伴走して、コツコツ会話力を積み重ねる優しいトレーナーになっています。
こうした訓練を続ければ、今のげんちゃんは、会話力が確実に上がる確信があります。
自閉症スペクトラムの子どもにとってのAIの可能性
AIによる会話練習は、単なるスキル習得ではなく、心の成長にもつながります。
内面に少しずつ変化が生まれている今こそ、会話練習をAIで積むことは、自閉症スペクトラムなど言語が苦手な子どもたちにとって、大きな力になると確信しています。
チャットGPTがいいのか?
どのAIを使ったらいいのか、というのは、疑問かもしれません。どれでもいいと思います。無料でかなりのことができる、グーグルのジェミニも使えると思います。
でも、使ってみた感じは、チャットGPTがいい感じでした。たまたま仕事でも使うので、課金しています。無料だとチャットGPTは制限がかかってしまうのです。
最初は、無料でもかなりのことができるので、ぜひまだ使っていないママは、使ってみるといいと思います。
自閉症と名のつくだけあって、言葉の問題は、ほんとにいつまでも深刻だと感じます。ここで、AIに出会えたのは、私的には、かなりヒットでした。
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